高校 政経・倫政の補習講座

大学入試に向けた知識、学んだことと生活を結びつける知恵を提供します。

 今回の単元はプラグマティズムと、のちに空想的社会主義と呼ばれる初期社会主義を理解します。
 アメリカで発展したプラグマティズムはパース、ジェームズ、デューイの3人を、初期社会主義はオーエン、サン・シモン、フーリエをそれぞれ区別するのがポイントです。違いが大きくないためわかりにくいですが、問題文には必ず区別するための用語がヒントとして示されていますので、それを見落とさないことが大切です。その意味でも問題をたくさん解きたいところです。

18プラグマティズム、空想社会主義
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 今回は社会主義を理解します。
 19世紀、A・スミス流の自由競争は弊害が顕在化します。J・S・ミルやプラグマティスト、進化論の考え方もそれらの弊害に対応しようとしていましたが、市場経済そのものの問題点を明らかにしたのがマルクスです。
 ポイントは、マルクスが労働や社会の構造をどう考えていたかです。下部構造、疎外、生産手段の社会的所有、史的唯物論など堅い言葉が出てきますが、市場経済や歴史を動かす力について説明しようとした用語です。それまでのA・スミスやリカードなどの経済学者は「見えざる手」によって調整される考えていたので、なぜ各人の努力差以上に格差が開くのか、恐慌はなぜ発生するのか述べていません。マルクスはそれらを明らかにしていきます。
 旧ソ連は崩壊し、中国も市場経済を導入していますので、社会主義の考え方は誤っていたようにも見えますが、現在の市場経済の国でも純粋に「見えざる手」に任せている訳ではなく、景気対策や社会権を重視します。大雑把に言えば、市場経済と計画経済は混ざり合っています。
 社会民主主義と呼ばれるフェビアン協会やベルンシュタインの修正主義も出題されますが、それらを理解する意味は、これからの国家の役割を考えるのにも役立ちます。

19社会主義
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 今回の単元はベンサム、ミルの功利主義と実証主義を理解します。
 19世紀に入ると、個人の幸福と社会の幸福が両立するのかがテーマとなります。A・スミスの考え方、個人が自分の利益を追求すれば「見えざる手」によって社会も幸福になる、という考え方がそれまで浸透していましたが、格差や植民地支配のような社会問題が発生するようになったためです。
 先に実証主義について触れますが、こちらは社会を考える時にも、自然科学のように科学的に把握すべきだという考え方です。コント、ダーウィン、スペンサーらが代表的です。コントやスペンサーはヘーゲルとは違う言い方で、社会が段階的に発展してきたことを主張します。この段階も出題されます。少し深入りしますが、スペンサーの考え、社会も適者が生存するという「社会進化論」の考え方は明治期の日本へも大きな影響をおよぼします。今もまだこの考え方は存在するかもしれません。
 一方、功利主義の考え方は、幸福とは快楽であり、不幸とは苦痛である、とします。多くの人々に快楽をもたらすものが善、苦痛をもたらすものが悪、「最大多数の最大幸福」とすることで、少なくとも「多くの人々に」と個々人を考慮に入れたことで、特権的な誰かを排除している点は評価できるでしょう。またある出来事が、多くの人々に快楽をもたらすのか「快楽計算」でき、つまり善悪もわかる、とも述べています。
 例えば限られたワクチンを誰から優先的に接種させるのか、「最大多数の最大幸福」を基準に快楽計算するのです。2021年、ある国でワクチン接種が優先されたのは高齢者や医療従事者でした。他にも感染症が蔓延する中で大きなイベントを実施すべきか、同性婚や夫婦別姓を認めるべきか否かの議論など、様々な場面で功利主義の考え方は使われています。「最大多数の最大幸福」の考え方で不利なのは、少数者と「人々が幸福感を感じることは押し進められるべきか」という点です。少数者は文字通り多数ではありませんし、古代ローマではキリスト教徒らがライオンに食われるのを幸福感を持って観戦していました。ベンサムの功利主義で例えば「いじめ」は解決できるでしょうか。
 ミルはベンサムの功利主義に修正を加えました。快楽には質の差があるというのです。
 ベンサムもミルも快楽の追求を追求するだけでは危険だということを「制裁」という言葉を使って、補足しようとしました。二人の「制裁」の違いを、A・スミスの「共感」と共に区別してください。それは功利主義の弊害は何なのかも示しています。

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