高校 政経・倫政の補習講座

大学入試に向けた知識、学んだことと生活を結びつける知恵を提供します。

2018年05月

 この単元は、世界の主な民族紛争を理解します。
 冷戦の終結後、世界から紛争がなくなったのかというとそうではありませんでした。冷戦で押さえつけられていたフタがとれたように、民族運動が多発します。
 この単元は「全部覚えないとダメですか?」とよく聞かれます。旧ユーゴスラヴィア、チェチェン紛争、印パ、同時多発テロ、ルワンダ内戦などなどたくさんあってどうしても羅列的になります。一つ一つに興味が持てるとは限らないことも原因でしょう。

 パレスチナでは、今日も子どもたちが撃たれて亡くなっています。紛争の原因や影響を知ることは、「どうしたらいいのか」を考えるのに必要です。
 また、民族問題はナショナリズムが関係します。ナショナリズムは国家主義と訳すのが一般的ですが、プラスマイナスの両面を持っています。ヘイトスピーチや排外主義、少数民族に対する抑圧につながる面と、アメリカ独立戦争やインドの独立、ベトナム戦争の際には原動力になった面もあります。ついでにいえば、紛争をしばらく経験していない私たちの中にもナショナリズムはあります。簡単に善悪をつけられないところが難しく、だからこそ国公立2次や私大の論述でも問われます。
 地理や世界史の人は今はキツくても一石二鳥、いずれ重なって両方の科目からの出題が解けるようになります。異文化理解という点で倫理や倫政の人は、コチラ(CS倫理 No63 異文化理解 : 高校 政経・倫政の補習講座 (myjournal.jp))も参照して下さい。

「移民は無条件に受け入れることも、無条件に拒否することも難しい可能性がある。どのような取り組みが求められるのか、あなたの考えを述べなさい。」
「民族紛争は宗教的な対立が原因となっているように見える。ある国の民族紛争の具体例をあげながら、平和的な共存に向けてあなたのアイデアを述べなさい。」
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 今回はイスラム教(イスラーム)を主として理解します。

 冷戦の終結後、同時多発テロを代表例として、世界各地でイスラム教徒(ムスリム)の活動が目立ちます。アメリカの政治学者、S・ハンチントンは『文明の衝突』(1996年)で、冷戦後の衝突は国家間ではなく、文明間で起こる、しかも不寛容なイスラム文明と傲慢な西欧文明(や独断的な中国文明)の間で起こる、と述べたことも影響を与えました。わかりやすいような、ステレオタイプ的なような気もしますが、先入観を排して、イスラム教がどのような考え方を持っているのか理解したいものです。

 受験上のポイントは、六信五行を正確に理解することです。
 他にもムハンマドの生涯のなどが問われる問題はありますが、それらは問題を通じて理解するのが早道です。

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 今回の単元は、ヘレニズム期の思想と、宗教にはいってユダヤ教を理解します。

 エピクロス派とストア派は、それぞれ快楽主義と禁欲主義という対称的な考え方をします。
 ただし、よく見ていくとそのキーワード、アタラクシアとアパティアは驚くほど内容が似ています。もっとよく見るとその後に与えた影響はだいぶ違いますが、大きな帝国ができて故郷やよりどころを失った人々が、個人的な心の平安を求めたことがわかります。詳しくは過去問のページへ(CS倫理 No05 ストア派とエピクロス派 : 高校 政経・倫政の補習講座 (myjournal.jp))。
 それはクローバリズムが進みナショナルなよりどころを失った現代人が、癒しや個人的な喜びを見出そうとする姿に似ています。一方で逆の動き、失われつつある結びつきや故郷の復活を求めて、ナショナリズムが台頭している姿も目立ちます。ヘレニズム期は「理性」という人間の共通点への信頼がありましたが、現代はどうでしょうか。

 時期は全く異なりますが、ユダヤ教については、十戒と(旧約)聖書を、内容を見たら「あ、これはモーセの十戒」と判別できる状態にして下さい。

ヘレニズム、ユダヤ教
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 今回の単元では、核を規制する国際的な取りきめと、米ソ二国間の取りきめを区別して理解します。
 
 核を規制する国際的な取り決めは、まず3つの条約を知ることから始めましょう。
  (1)部分的核実験禁止条約(PTBT)
  (2)核拡散防止条約(NPT)
  (3)包括的核実験禁止条約(CTBT)
 
 (1)のPTBTは、日本のマグロ漁船が核実験で被爆した第五福竜丸事件を受けて、地下以外の核実験を禁じる内容です。核戦争の危険が迫った1962年のキューバ危機の翌年と考えれば時期の理解がスムーズです。
 (2)のNPTは、核保有が許された5カ国以外が核兵器を保有することを禁じる内容です。5カ国以外へ核兵器が拡がっていくを防いでいて、疑いがあればIAEA(国際原子力機関)が査察を行います。一方で保有が許された5カ国(偶然にも国連安保理の常任理事国の5カ国です)が核兵器を減らすことを防ぐことができませんので、不平等の面があります。そもそも国際法は一般に、批准していない国、加盟していない国を拘束することができませんでしたが、NPTも同様で未加盟のインドやパキスタン、イスラエルそして脱退した北朝鮮などを拘束することができない問題があります。
 (3)のCTBTは、地下を含む爆発をともなう核実験を禁じる内容です。ただ、この条約が発効するためには原子炉がある44カ国すべての国の批准が条件になっていて、アメリカや中国が批准していませんので、発効することができていません。

 わかりづらいのが米ソ二国間の取りきめで、SALT、STARTなどがSALTⅠ、SALTⅡ、STARTⅠ、STARTⅡ、新STARTなど複数あり、また批准拒否や未発効のものがあり区別が難しい点です。これらも「理解してから問題」より「問題を解いて理解」の方が早道です。 

「核兵器に関して、今後の国際社会はどのような取り組みが求められるだろうか、従来の取り組みを考慮しながらあなたの意見を述べなさい。」
「東アジア情勢の変化にともなって、自衛のための必要最小限の実力として、日本も核兵器を保有すべきだという主張がある。この主張に対してあなたの意見を述べなさい」

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 今回は冷戦の終結を理解します。
 大ざっぱにアウトラインを示します。
 東西のボスが疲弊してきました。アメリカはベトナム戦争や貿易上の赤字で相対的な地位が低下してきました。ソ連は社会主義ならではの問題「頑張っても頑張らなくても、分配は平等」によって、生産意欲が乏しく、経済的に停滞しています。
 そのような時期、1985年にソ連の新しい指導者、ゴルバチョフが改革=ペレストロイカを始めます。ペレストロイカの中身は、アフガニスタンからの撤退、情報公開(グラスノスチ)、西側と協調する「新思考外交」などを指しますが、米ソ関係は急激に和解へ向かいます。
 80年代末からの展開はめまぐるしいものがあります。
  ・89年はベルリンの壁崩壊、天安門事件、マルタ会談、
  ・90年は東西ドイツ統一、
  ・91年はソ連解体や韓国と北朝鮮の国連加盟、
 特に1989年のマルタ会談は、言い方はよくありませんが、40年間近く激しく対立していたギャングのボス同士が握手するという出来事ですから、世界に衝撃を与えます。
 この時期、日本国内では「バブル経済」がおきていましたので、未来が開かれる感じがするような、華やかな時期だったわけです。
 余談ですが、この時期、保護者の方は何歳ですか?引き算してみましょう。だいたい20歳前後だと予想されます。この華やかな時代の出来事をインタビューしてみましょう。
 「ベルリンの壁が崩壊した時、どう思った?」
 「ソ連が解体した時、何してた?」
 20歳前後のチチ、ハハのことを想像する自体が嫌かもしれませんが、きっと青春真っ只中だったと思います。


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