高校 政経・倫政の補習講座

大学入試に向けた知識、学んだことと生活を結びつける知恵を提供します。

2018年07月

 インフレやデフレは貨幣価値の上下でしたので、国民生活を左右します。よって中央銀行である日銀は対策をとります。対策の取り方は世の中に出回る通貨量、これをマネーストックといいますが、マネーストックを調整することでインフレやデフレをやわらげたり、解消しようとします。
 この調整を金融政策といい、今回の単元のポイントは、金融政策の種類と内容を理解すること。それと信用創造の計算問題を解けるようになることです。
 日銀による金融政策の大ざっぱな原理は、
  ・インフレが進んでいて是正しようとする時は、マネーストックを減らす。
  ・デフレが進んでいて是正しようとする時は、マネーストックを増やす。
 田んぼに水が多いときは水を減らそう、水が少なければ増やそうと、蛇口を閉めたり緩めたりすると考えればいいでしょう。
 日銀は「銀行の銀行」として民間の銀行(金融機関)に対して、これらの操作を通じて、マネーストックを調整します。不況の時、世の中に出回る通貨量を増やしたければ、企業や個人が資金を借りやすいように、民間の銀行の金利が下がるようにする。
 金利はまだ皆さんは身近ではないでしょうが、進学して初年度納入金をのためとか住宅ローンのため、開業するためとか工場の設備を増やすために資金を例えば100万円借りるというような時、金利が年5%なら105万円返済することになりますが、1%の金利なら101万円の返済ですみます。金利を下げれば経済活動は活発になるのです。
 逆に好況で景気はいいけれどもインフレが進みすぎていると日銀が判断すれば、資金を借りにくいように金利が上がるようにします。
 金融政策の3本柱は、
  ①公開市場操作、
  ②公定歩合操作、
  ③支払準備率操作、
 です。
 ただし、この3本柱の2つ、公定歩合や支払準備率(預金準備率)は金融ビッグバンで民間の金融機関が金利を自由に設定するようになったので、現在は使われていません。使われてはいませんが、金融政策の原理というか「日銀から市中銀行への貸し出しの金利が下がれば、市中銀行が一般の人に貸し出す時の金利も下げる」という基礎を理解するのに便利ですので、ここから理解し始めましょう。

page001
page002
page003


 今回の単元はインフレとデフレを理解します。
 インフレとは貨幣価値が下がること、デフレとは貨幣価値が上がることです。
 貨幣価値という言葉も堅苦しいですが、例えば100円でコンビニのコーヒーが買える時と、120円でないとコーヒーが買えない時では、100円玉の貨幣価値が高いのは、100円でコーヒーが買える時です。
 というと貨幣価値が上がるデフレの方がいい気がしますが、デフレは一般に不況の時に起こります。景気がよい好況の時は経済活動が活発になり、どんどん商品が売れて、つくれて、買えるので、貨幣価値が下がります。家計でも好況の時は、プチ贅沢というか少し価格が高くても、所得が上がっているので、我慢せずに買い物をします。こうしてインフレ、貨幣価値は下がっていくのです。経済活動が活発と考えれば、インフレが悪いとは必ずしも言えません。一般に好況の時にはインフレが起こり、不況の時にはデフレになります(例外が不況下の物価高、スタグフレーションです。最悪の組み合わせですね)。
 受験のポイントは、「なぜインフレになるのか」、「インフレなるとどのような影響があるのか」という原因と影響を、混ぜずに分けて考えることです。

 「なぜインフレになるのか」原因は大きく2つに分類できます。
  (1)ディマンド・プル・インフレという需要が引き起こすインフレ
     (2)コスト・プッシュインフレという供給が引き起こすインフレ
 需要が引き起こすインフレは、家計の消費活動が活発で総需要が総供給を上回った場合に起こります。高度成長期がそうでした。一方、供給が起こすインフレは、原材料費や賃金が上昇したことで起こるインフレです。1973年の第1次石油危機や2022年のロシアによるウクライナ侵攻で発生していて、こちらのコスト・プッシュインフレの方は一般に「悪いインフレ」と言われます。

 「インフレになるとどのような影響があるのか」は、実質賃金や借金の負担、年金など立場によって、いい影響も悪い影響もあります。それらを区別します。繰り返しますが、インフレの原因と影響は区別しましょう。

「仮に金融市場と財市場があり、外国との取り引きがなく、商品は1種類だけが貨幣を使って取り引きされると考えよう。このとき、何がデフレの原因となっているのか、またデフレはどのような弊害をもたらすのであろうか。100字以内で記せ」(早稲田大学)

 また、原因と影響が理解できると、借金をするのはインフレ時が有利か、デフレ時が有利かとか、今は預金した方がいいかな、それとも消費する方がいいかなとか家計にも役立つはずです。

page001
page002



 ニュースで「成長率」が話題になることがあります。日本は2%に達しなかったとか、中国は8%だったとか、日本の高度成長期は10%前後だったとか。今回はこの「成長率」とは何なのかを理解します。

 ある国のGDPが500兆円から550兆円に増えれば、経済成長率は10%です。
 単純に金額だけの成長率ですので「名目経済成長率」と言います。GDPの金額が10%上がっても、物価(モノやサービスの価格の平均)が10%上がっていれば、経済が成長しているのかわかりません。物価の上下分を加味した指標を実質成長率と言います。ここでは計算問題がありえますが、それが苦戦するようです。
 前回のGDPから国民所得(NI)への変換は、引き算と足し算でした。今回はGDPデフレーターという数値を使った割り算を含んだ計算が出てきます。
 物価が10%上昇していたら、GDPデフレーターは110、
 物価が10%下落していたら、GDPデフレーターは90として、公式に代入しましょう。

 計算が含まれるだけで拒否感を持つ人がいますが、計算は単純ですからこれも問題を通じて慣れましょう。繰り返しますが、こういう文系の人が苦手意識が出やすい単元で差がつきます。私が苦手なところは多数の人が苦手としているところ、そこをどうするか、です。

 「高度経済成長」と呼ばれたのは、実質成長率が毎年10%近かった時期のことを指します。実質成長率が高ければ、生産は活発で、失業率は低く、所得も上昇します。

page001
page002
page003

 今回の単元は、経済の状況を把握するための指標を理解します。
 いずれも国際的に同じ基準で計算されますので、他国と経済の状況を比較するのに便利な指標です。
この指標は大きく2つに分けることができます。
 (1)ストック(代表例は国富)
 (2)フロー(代表例はGDPや国民所得)

 ストックとフローの違いは、ストックは過去からの蓄積、フローは一定期間内で生み出された量です。例えば家計で言えば、年収はフローにあたり、それが蓄積された預貯金がストックにあたります。いくら年収(フロー)が多くても、支出が多くて使ってしまえば、預貯金(ストック)は増えません。同じように国家ではGDPが高くても、国富が多いとは限りません。
 出題の例を見ましょう。次のうちストックはどれでしょうか。
  ①ある年における住宅建設の着工戸数
  ②ある年における自動車保有台数
  ③ある年における海外旅行者数
  ④ある年における米の消費量
 ストックとは過去からの蓄積でした。①~④のうちで蓄積を示しているものを探せばいいのです。答えは②。これだけが過去からの蓄積です。自動車生産台数や販売台数だったらフローになるでしょう。

 この単元は苦手意識を持つ人もいます。フローのGDPや国民所得に計算問題が含まれるからです。
 簡単なストックの方のポイントは、何が含まれ、何が含まれないか、です。とりわけ国富には、土地代は含まれますが、現金や預金や有価証券は含まれないことです。
 フローの方のポイントは、GNPから国民所得を計算していく時に、何を引いて、何を足すのか、です。とっつきにくいですが、でも単純な足し算と引き算です。出題は簡単な年も難しい年もありますが、難しい過去問に触れて慣れていきましょう。この単元も、受給曲線と同じように平均点付近にとどまるか、高得点を得るのか差がつきやすい単元です。
 たくさん問題を解きたい人は、下の問題に加えてCS(センターサンプル)の過去問を解きましょう(CS政経 No39 フローとストック  : 高校 政経・倫政の補習講座 (myjournal.jp))。

page001
page002
page003

 今回の単元は仏教です。
 仏教の用語は聞いたことのあるものが多いので、それぞれの意味は区別はだいたいできます。ただその分、問われる内容は深入りしていますし、また用語と用語の関係、つながりがわかりにくいのが特徴です。例えば四苦、四諦、四法印、三毒、三宝、など漢数字を含んだキーワードそれぞれの意味はわかるのですが、それぞれの関係がわかりにくいのです。
 早めに用語を定着させて、多くの問題を解く。解いて間違えながら理解していくのが早道です。

07仏教

07仏教Ad

07仏教Cha




このページのトップヘ