高校 政経・倫政の補習講座

大学入試に向けた知識、学んだことと生活を結びつける知恵を提供します。

2020年04月

社会体制の変革ではなく、自分にとっての真実を求めたのが実存主義です。キルケゴールやヤスパースが神を想定するところに違和感があっても恐らく高校生には魅力的な人たちです。キルケゴールとヤスパースは有神論的実存主義、ニーチェやハイデカー、サルトルは無神論的実存主義に分類されます。
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 19世紀初頭の初期社会主義を経て、マルクスが自称「科学的」に資本主義社会の矛盾を指摘します。冷戦は社会主義国の敗北と言っていいと思いますが、資本主義のしくみやその下での人間の疎外を明確に説明したのはマルクスですので、大学に行けばマルクス経済学は生きています。
 19世紀後半からの修正マルクス主義、社会民主主義のウェッブ夫妻、バーナード・ショウ、ベルンシュタインも出題されます。

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 ニュートンたちによって自然科学は発展しましたが、社会のとらえ方へも影響を与えます。実証主義の考え方は自然科学が自然を法則の下にとらえたように、社会もまた法則の下にとらえようとします。
 コントは、人間は精神の発達段階と共に社会にもまた発達段階があるととらえました。現在の学問分類、社会科学を生みます。ダーウィンは適者生存、自然淘汰の考え方をもたらし、スペンサーはそれを人間社会にも適用し「社会進化論」を唱えました。細かく言えばダーウィンよりスペンサーの方が先に進化論を唱えていて、スペンサーの強調点は社会は有機体のようなものなので、国家は個人への干渉を避けるべきこと、社会は軍事型社会から産業型社会へ進化していくことを述べました。
 ヘーゲルやベンサムたちが個人と社会の関係を考察してきた動機は顕在化する社会問題にありました。初期社会主義、オーウェン、サン=シモン、フーリエらも理想の共同体を考えます。3人の違いは細かく感じますが、区別が必須です。そういえばオーウェンは自ら成功した経営者でしたが、労働時間の短縮や労働者の子ども達のために初めて幼稚園を創設した人物です。成功者が理想の社会のために工夫しようとした気持ちには、何かホッとするところがあります。
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 アメリカでは独特の真理観が育ちます。大ざっぱに言えば、役に立つから真理、使えるから真理というプラグマティズムです。パース、ジェームズ、デューイの3人が登場しますが、それぞれ少しずつ違います。とりわけジェームズの「実用主義」デューイの「道具主義」を区別する必要があります。
 少し深入りします。プラトン以来、トマス・アクィナスやベーコン、デカルト、カントなど「普遍的な正しさを認識できるか」を問題してきた哲学の伝統からすれば、プラグマティズムはあっさりと難しい話は飛ばしてしまいます。そこがシンプルでもあり、逆に西洋哲学の伝統からは軽く扱われてしまうところもあるのです。ところが、よく見るとパースはカントの仮言命法「~ならば~すべき」に新しい意味を加えていたり、ジェームズの実用主義も理論より前の「生き生きとしたリアルな感じ方」を重視した点では、のちに見る西田幾多郎やベルグソンの考え方につながります。
 ちなみに日本の教育論はデューイの影響を強く受けています。問題解決学習や探究は、理論よりも「まずやってみる」ことやPDCAサイクルを求めています。教育系に進む人は自然にデューイの影響を受けていきますが、それも相対的な視点が持てると理想的です。
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 ヘーゲルと同じ頃、個人の幸福と社会全体の幸福の関係を考えたのが功利主義です。A・スミス流の個々人が自分の利益を追求すれば「見えざる手」によって、社会の利益と調和するという考え方は、実際の歴史では格差や植民地支配など弊害が19世紀に顕在化しました。ここではベンサムとミルの違いが最も大事ですが、A・スミスの共感、ベンサムの制裁、ミルの内的制裁も彼らが自分の主張に条件をつけていたことも注目です。
 ミルは、ベンサムのいう快楽に、質の違いを加えます。単に多数の快楽をもたらすのが善なのではなく、質の高い快楽と質の低い快楽があると言います(確かにローマ帝国ではキリスト教徒がライオンに食われるのをたくさんの人々が快楽を持って観戦していました)。
 多数派は少数者へ向けて社会的な専制を行う危険性があることもミルは述べています。これも現代でも見られます。よってパターナリズム批判もします。それは「誰にも迷惑かけていないからいいじゃん」という意味。たとえあることが本人にとって損するかもしれないことでも、本人以外に影響を与えない場合には干渉されない、ということです。これを「他者危害の原則」といい、ミルは自由や自己決定を重視して、お節介や温情主義(パターナリズム)を嫌います。尊厳死や輸血拒否、身なり(ヒゲやタトゥー)など現代の問題にもつながっています。

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