高校 政経・倫政の補習講座

大学入試に向けた知識、学んだことと生活を結びつける知恵を提供します。

2020年11月

 環境倫理学は、比較的新しい学問分野です。環境を守るのは自然のためなのか、人間のためなのか。ボールディング、レオポルド、ハーディン、ハンス・ヨナス、シンガーらのそれぞれ現在にも影響を与える考え方を提案していますが、その区別が必要です。
 2次や小論文向けに難しい話をします。シンガーは苦痛を感じる能力のある動物を殺すのはよくない、と功利主義の立場から批判します。が、その論理で言えば苦痛を感じることができない人間は人格とは言えないのだから、(他者への臓器提供などに)利用されてよいという結論にもなり、生命倫理にもつながります。
 人間は苦痛を感じるから配慮が必要なのか「人間性の由来」、「人間性とは何か」を問うのです。
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 人や物、情報が国境を越えて行き交うグローバリゼーションの時代にあって、異なる文化と接する機会が増えています。接する機会が増えれば、喜びを伴うような交流も増えるでしょうが、一方で摩擦も増えています。これも小論文のテーマになりそうですが、結論が「異文化との共生が必要だと思います」という結論だけなら中学生の作文。ある異文化が国内に入ってきた時、異文化をそのまま保っていいとすれば多元主義(文化相対主義)ですが、例えば教室で授業中に宗教を持ち込んでもいいでしょうか。同じように土地を買って土葬を始めるのはどうでしょう?ダメだとすれば同化を求める普遍主義です。どちらが正しいかではなく、簡単に断言できない面があって、そういう断言できないことを知るチャンスを出題が教えてくれます。裏面に「オリエンタリズム」を指摘したサイードの文章が出ていますが、このような問題文から異文化との接し方や、自分の中に潜む視点の偏りを考える材料になります。
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 情報化の進展は私たちの行動や判断に大きな影響を与えています。その情報化の問題点に警鐘を鳴らしたリップマン、マクルーハン、ブーアステイン、トフラーと、出題されているボードリヤールを区別しましょう。これらも小論文で使えます。
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 現代の家族は変容しています。「家族ってこういうものじゃないの?」と多くの人は自分の家族がモデルというか基準になっていますが、世の中は変化していて、あたりまえの家族像は歴史的なものに過ぎません。日本でもサザエさんの家のような拡大家族の方が主流でしたが、1960年代からは核家族が増え、現在では単独世帯や夫婦のみが増えていますし、母子世帯、父子世帯も増えています。そのことによって孤独死やDV、格差など孤立化する人々の諸問題が発生しています。家族の形態が変化する原因は、主に産業構造の変化、単純にいえばかつて農家は一家総出で農作業し、食い扶持を確保する必要がありましたが、勤め人が都市部へ働きに出るようになれば家族のメンバーは少なくて済みます。景気が悪くて失業していれば家族内の軋轢が増え、悪循環が生じます。
 家族の形は歴史的に相対的なもので「正しい家族」の形はないのだとしても、少子高齢化が進むこの国にあって、現状ではどうなっていていて、どういう社会制度が求められているのかを考えながら問題を解いてみてください。問題が家族が抱える問題をよく照らしています。
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 脳死は人の死か、生殖補助医療(代理出産や生死、卵子の代替)、尊厳死など生命倫理は、是非を論じれば簡単には答えが出ません。小論文のテーマになりますし、そもそも人の命の扱い方を変化させていく力を持った技術です。本当は考えると面白い是非を問う出題は共通テストではありません。個別試験ではあり得ますが。そうではなくて、ここでは、現時点ではどういう制度や現状があるのかを知って欲しいと思います。
 脳死・臓器移植問題については臓器移植法、法律の内容が頻出です。
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