(7)その大学でなくてはならない理由② その大学に触れた経験
「その大学でなくてはならない理由」を考える2回目です。2つ目の方法は、オープンキャンパス(以下OC)や体験授業へ行った時の印象を述べる方法です。
わかりやすくなるように、仮にあなたが高校入試の前期選抜の面接官だったとしましょう。面接に来た中3生がこんなふうに述べました。あなたの高校に入学したい意欲を、あなたならどう採点、評価するでしょうか。
「貴校は、歴史と伝統があり、先日の公開授業でも各教室に電子黒板が設置され、黒板が広くトイレもきれいでしたし、バス停からも近いので学ぶのに適した学校だと思い志願しました。」
「貴校は、制服がなくて私服で登校していいですし、部活動への参加の任意で、しかも週2日間は休養日にあてられています。自由な校風に惹かれて志願しました。」
意欲がある感じがするでしょうか。私は感じません。取り繕っている印象が強いです。工学部などの理系学部で実験設備が整っていることは大切ですし、24時間使える図書館があれば確かに魅力的ですが、国内で有数の設備でない限り、設備や建物は主な志望動機にはなりません。就活で完全週休2日制であることや独自の育休制度を設けていることなど、福利厚生が充実していることが主な志望動機にはならないのと同じです。
OCや体験授業の印象を志望動機につなげたい場合には、人に関わらせることを勧めています。その大学や学部・学科に関係する人、別のところで先生に関連させる方法については触れましたが、先生だけでなくや学生、OB・OGなど人を志望動機にするのです。
例えば、OCや体験授業に行った時の内容が、ちょうどあなたが学びたいことと直結していればそれを志望動機にすることができます。一番いい。が、そんなことは稀でしょう、そうでなくても例えば次のような例が参考になります。
「ハイ、他の学校にはない特徴があるからです。なぜなら、OCに訪れた際に案内して下さった学生さんがいたのですが、緊張する私たちを笑わせながら、丁寧に案内して下さいましたが、この大学の魅力について『先生方はあまり学生に干渉しないけど、研究したい分野は思いっきりできる設備や文献が整っている』と教えて下さいましたし、『私、高校時代はコミュ障で誰とも話しなかったのにこんなふうに変わった』という話をしてくれました。貴校は私たちの力を伸ばしてくれると共に、自らを変えるチャンスを与えてくれる学校だと感じたからです。」
「ハイ、大学見学会で訪れた時の印象が忘れられないからです。なぜなら、案内して下さった〇〇先生がカイコのクズ繭で油を吸着する実験を見せて下さり、捨ててしまうクズ繭が水質浄化や環境保全に役立つことがわかりました。私が興味があるのは繭ではありませんが、捨てられてしまうような素材や身の周りでありふれている素材が世界に役立つ可能性があって、そういう研究をどんどん考えることができる貴校に惹かれたからです。」
入学後の学びの設計には少し甘さがありますが、大学の実際の姿を見たことを伝えています。時間と労力を費やして、机上だけではできない表現、私にしかできないオリジナルな表現ができます。
ここまで「その大学でなくてはならない理由」を見つける方法として、その大学のパンフレットやHPからあなたが学びたい最も近いものをピックアップする方法、オープンキャンパスや体験授業へ行った時の印象を人に関わらせて述べる方法の2つを見てきました。
よかった例、これまでの自分を振り返り、相手の大学を調べた例を挙げます。
面接練習をしていて、この生徒さんが自分を振り返った過程を想像して、涙が出ました。きっと入学したら、いじめを防ぐための有効な研究をして、その姿勢やノウハウを身につけた教員になってくれると予想できます。つらい経験だって、志望動機になる。いや、つらい経験を振り返って、自分の未来や使命に生かすことができるのです。
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