今回はプラトンを見ます。
 ソクラテスは一冊も著作を残していませんが、愛弟子のプラトンがソクラテスの言葉を伝えます。一方でプラトン自身の考え方がそれらの著作の一部に反映されています。ソクラテスとは異なるプラトンのキーワードは「イデア説」や「想起(アムネーシス)」、「理性・気概・欲望」や「哲人国家」あたりとなります。
 プラトンは、ソクラテスが求めた「本当のこと」、それは理性によってのみとらえることができ、変わることがない普遍性を備えている「本当のこと」をイデアと呼びました。イデアideaはアイデア、考え、と同じ単語ですが、idealという「理想的な」を意味する単語を思い浮かべてもらう方が、理解しやすいです。人間は洞窟に映る影絵を見るように本当のことはよくわかっていないが、影絵には映っている元、本物があるように、また例えば正三角形には正三角形の定義があるように、本当の世界=イデア界があると考えました。
 しかし、イデア界と、影絵を見ているような現実の世界、現象界はどう関係するのか、二つの世界の関係を説明する必要が出てきます。プラトンの説明では人は、肉体という魂の牢獄を持つことでイデアを忘れてしまったが、故郷であるイデアを求め、憧れ、想い起こすのです。この想い起こすことを想起=アムネーシスと言います。想起するので「本当のこと」を人間はわかる、という訳です。
 ちなみにこの「本当のこと」を求める姿勢や動機をエロースといいます。「本当のこと」への愛です。よって、エロいという言葉は、本来は「本当のこと」求める褒め言葉なんです。
 プラトンは人間の魂についても、ソクラテスより詳しく分けます。魂は、理性、気概(意志)、欲望の3つの部分に分かれていて、それぞれを善いものにするためには、理性は知恵を、気概は勇気を、欲望は節制することが必要で、3つの徳が調和した時、正義が実現すると考えました(四元徳)。ソクラテスが対話によって求めた勇気や正義がバラバラではなくて、人間の魂に位置づけられています。たしかに欲望に節制が必要なことは皆さんも毎日感じているでしょうし、気概(意志)も万引きする勇気や人を傷つけるような勇気は嘘っぱちで、知恵を持つ理性のコントロールが必要でしょう。
 プラトンは、ポリス(国家)を大きな魂ととらえて、人間の魂が3つに分けられるように、国家も3つの階級に分けて、哲学者が統治者となるか、統治者が哲学を学ぶ必要があるとしたことも特徴です。市民の裁判によってソクラテスが死刑に追いやられたことを、プラトンは忘れていません。
 出題は、イデアそのものだけでなく「なぜ人はイデアを認識できるのか」という想起説、そして魂の三部説、哲人国家が繰り返し出題されています。
 Take a bird's eye view.俯瞰します。プラトンもまた2500年の月日を超えて伝えていることがあります。影絵を見るように実際ではないことにおびえていないか。自分の気概(意志)を本当のことに使うことができているか。理想的な国家とはどのような国か。普遍的な正しさは存在するのか、あるとすればなぜ人間をそれを知ることができるか。そんな疑問を持ちながら学べると理想的、エロいです。
倫CS03表
倫CS03裏