高校 政経・倫政の補習講座

大学入試に向けた知識、学んだことと生活を結びつける知恵を提供します。

カテゴリ: 読んでわかる、新しい入試制度(志望動機、過去の実績、面接対策)

(5)結論は何を伝えるべきか(志願理由系、志望動機)

 総合型選抜では中心に志望動機、志願理由があります。
 下の図がそのイメージ図です。志願理由が固まれば、面接はもちろん出願時に志願理由書が課されていても、過去系の活動報告書のような書類、未来系の学びの設計書のような書類があっても、生かすことができます。

スライド9中心は志望動機

 志望動機も具体的に仕上げていきましょう。これまでは過去系を中心に具体的に見てきましたが、志望動機を構想する際も、同じように初期は問いを分割してみると整理できます。急がば回れ。
 繰り返しになりますが、多数派は「その大学でなくてはならない理由」は、ありません。ランキング表上位の人気校だから志願していることが多いでしょう。でも「御校は偏差値が高い人気校なので、志願しました」と言う訳にはいきませんので、通用するタテマエをつくる必要があります。「タテマエをつくる」と述べましたが、嘘をつくのではありません。むしろ逆です。本音を見つけるのです。
 その大学でなくてはならない理由は無いとしても、学部、学科にはなんとなく理由があります。なぜ自分はその学科を目指しているのか、本音を探してみます。そのために、次のように問いを分割してみます。これらを静かに自分に問いかけてみましょう。何が見えてくるでしょうか。


「その学部や学科へ行きたい本音は何なんだろうか」
「その学部や学科を選んだのはいつ頃だったろうか」
「今まで興味を持った学部や学科の候補の共通点はあるだろうか」
「その学部や学科を選ぶ際に、最も大きな影響を与えている人物は誰だろうか」
「その学部や学科を選ぶ際に、最も大きな影響を与えた出来事は何だろうか」
「そこへ入学したあと、最も理想的にはどんな研究を、どんな方法でしていきたいのか」


 本音を探してみると、こんなふうになります。

「親が教員なので、絶対教員は嫌だと思っていたけど、誰かの力になりたいという思いはずっとあって、中2の時に就業体験でデイサービスセンターに行った時に、上手くできなかったのにお年寄りが泣いて喜んでくれる姿を見て強く思った。誰かの力になるために人を学びたいし、将来も限定されないので人文学部か経済学部」


「親がメーカーに勤めているので、振り返ってみると小さい時からものづくりが楽しくやりがいがありそうだと思ってきた。自分も嫌いではないのでメーカーで働きたいので工学部。できれば地元にあるE社でプリンターではなくて、画像や映像をもっと幅広い世代が活用できる何かを開発したい」


「自分はサッカーをしてきたが、いくつかのメーカーのシューズを履いてみて、どうしてもM社のシューズがフィットするし耐久性や機能性もあって気に入っている。ただデザインや革新性は今ひとつ。いずれはM社でサッカーシューズの開発に携わりたいので、M社へ多く就職している大学の工学部か繊維学部」


「TVでネットカフェ難民についての番組を見て、国内の貧困が予想以上でびっくりした。自分がこれを知らなかったことに憤りも覚えた。なぜ放置されているのか社会のしくみや制度を知った上で自分が力になれないかと思って、法学部、弁護士という道も考えたけどちょっと違う。高2の頃から社会福祉士になるために福祉学科や経済学部へ行こうと考え出した。資格を持って地元の市役所で公務員になり、福祉課へ勤めたいが、地方自治における福祉現場の現実と理想のギャップを大学で学びたい」


「南北問題に関わる授業を受けた時に、途上国の子どもたちが児童労働をして学校に行けないことを知った。背景にある貧困を緩和する一つの方法は熱帯地方の農業の生産性を高めることだと思ったので、その方法が学べる農学部。以前は医学科にいきたいと考えていたけど、学力的に難しい。でも中村哲さんの活動ようにたくさんの人が救えると知ったので農学部。英語も好きだし、国際的に活動したいので留学もしたい」


 その学部や学科を選んでいる何らかの理由があります。別のところで述べましたが、それらが決まらない、見えないので教養学部やリベラルアーツ学部、入学した後に専門を決める総合入試というケースはあるでしょう。また隣接する学部で絞れない、例えば法学部と経済学部と社会学部が絞れないケースもあるでしょう。しかし全く興味のない学部は眼中に入ってこないというか、志望しないものです。多くの受験生はそうはいっても何らかの理由があります。
 上の例を見てもらえれば、学部・学科の志望動機は過去の自分、将来の自分とつながっていることが確認できますし、もう面接の志望動機として結構できあがってきていることもわかってきます。ここまでは自分の中にあったものを顕在化、気づいて外に出しさえすればいいのです。さあ、本音を書き出してみましょう。それが志望動機のスタートラインになります。


 さらに上級に近づいていきましょう。なりたい職業や仕事がある人は、それを考えるようになった動機を掘り下げていくと、見たくない自分が見えることがあります。
 例えば、医師になりたいと考える人が、それをとらえ直す過程でこういう自分に気づくことだってあり得ます。

「自分は理数系が得意で、他人よりもできる。クラスの誰も解けない問題ができて、先生にも誉められたし、クラスメートから『すごいなあ』とうらやましがられもした。だから人からうらやましがられる職業として医師になりたい」という自分。

 例えば、教員に足りたいと考えてる人が自分の未来や夢をとらえ直す過程で、

「自分は誰かの役に立ちたいから教員になりたいんだと今まで思ってきたけれど、振り返ってみるとそう思ったのは中2の秋、親友からシカトされた時からだった。あの時強く思ったのは『自分のような思いをする生徒がいないように』と思ったけれども、それより強かったのは『二度とあんな寂しい思いをしたくないから。誰かから必要とされる存在、そんな職業に就きたい』と思った」自分。

 他にも、途上国で農家が自立できるように農業を教えたいと考えている人が、

「途上国の貧困や児童労働を是正したいと思ってきたけれど、考えてみるとそう思ったのは、本当は医師として途上国に行きたかったけれど、学力的に難しいことがわかった高1の秋だった。国内のありきたりな職業では自分が埋没してしまいそうだから、活躍しているイメージがわきやすい国際的な農業技術者」という自分。


 そういう自分を見つけるのは、苦しさを伴います。けれど、もしこんなふうに自分をとらえ直すことができたなら、ぜひ君の将来や夢を実現して欲しいと願っています。こんな自覚がある医師や教員、農業技術者こそ世の中にいてほしい、必要とされて欲しいと思うからです。「誰かのために」生きることに、エゴというか「自分のため」も含まれている自覚。純粋で無欲に「人々や世界に尽くす」自分だけではなくて、ドライな計画や自分の傷が含まれているという自覚。それらは大人に近づいている証拠です。自分を見つめるもう一人の自分と出会えたし、これが「考える」ということです。面接や志願理由書でそこまで表現する必要はないでしょうが、少なくともこうやって自分を見つけることができたことが、必ず君の表現を、血が通った本物に変えていきます。

(4)結論は何を伝えるべきか

 結論をまず述べてしまう型を勧めてきました。
スライド25面接の型
 では結論、その〇〇はどんな内容だったらよいのでしょうか。
 出来事より、出来事から学んだことの方が適切です。つまり、

  「ハイ、文化祭の準備です。なぜなら‥」
  「ハイ、デイサービスセンターを訪れたことです。なぜなら‥」
  「ハイ、部活動です。なぜなら‥」

 それより、
  「ハイ、文化祭の準備で、協力することの大切さを知ったことです。なぜなら‥」
  「ハイ、デイサービスセンターで努力すればかなうことを知ったことです。なぜなら‥」
  「ハイ、部活動で一つのことを続けることの大切さを知ったことです。なぜなら‥」

 の方がいい。
 出来事を結論にするより、その出来事から「学んだこと」を結論にした方が、聞いている面接官からしても、表現しようとする受験生がそのあと続ける言葉の流れとしても、わかりやすくなります。またこの結論から表現する形式は、小論文にも応用できます。


 次に、「なぜなら」の後の✖✖です。
 次はとてもよく見られる例、失敗例です。なぜダメなのか指摘してみてください。
スライド20どこがダメ
 この例がダメなのは、抽象的だからです。
 ✖✖の部分には、具体的なエピソードを入れることを勧めています。
 高校生は、大人の入り口で抽象的な言葉を学んでいる最中だし、ましてや面接で優れた人物に見せたくて背伸びしようとするので、どうしても具体性が薄れてしまいます。
 さきほどの例はどこが抽象的で、どの部分でどう表現したらいいでしょうか。

 言いたいことは間違っていません。抽象的という言葉が難しければ、‘ボンヤリしている’と言いかえてもいいのですが、この文中にある、
 「充実した」、「沢山の」、「色んな」、「視野が広がる」、「将来」、「力」、などがボンヤリしていて、何を示しているのかわかりません。相手に切実感や本気度が伝わらず、アピールできていないのです。
 頭の中には「私は、なぜそう考えたのか」を示す具体例が、必ず隠れているはずです。それを表現しないのが残念というかもったいないというか、一番大事なところを落としているのです。繰り返しになりますが、過去系が問われている場合、面接官が知りたいのは、あなたが経験を通じて学んできたことです。
  「どんな出来事があって、‘充実した’と思えたのか、その出来事」、
  「どんなエピソード達があって、‘沢山’と言えたのか、そのエピソード達」、
  「例えばどういう人を想定して、‘色んな’人と思っているのか、その人々」、
  「どんな見方ができるようになることが、‘視野が広がる’と言えるのか、その見方」、
  「どんな職業や職種、未来への計画を、‘将来’と呼んでいるのか、その将来」、
     「何ができるようになることなのか、その‘力’」、

 私が感動した映画を「感動した、感動した」と百回述べても、あなたは感動することはできないでしょうし、私が自分について「協調性がある、協調性がある」と百回述べても、あなたは私を協調性があるとは思えないでしょう。「感動」「協調性」、最近よくある述語、「実感しました」と何度繰り返しても相手には伝わりません。
 ですから、そのボンヤリした抽象的な言葉が何を示しているのか、私はどんな具体例やエピソードがあって、その抽象が出てきたのかを、思い出してみましょう。

 アドバイスをもとに、こんなふうになりました。

「ハイ。他の学校にはない特徴があるからです。なぜなら、オープンキャンパスに訪れた際に案内して下さった学生さんがいたのですが、緊張する私たちを笑わせながら、的確に案内して下さいましたが、この大学の魅力について「先生方はあまり学生に干渉しないけど、研究したい分野は思いっきりできる設備や文献が整っている」と教えて下さいましたし、「私、高校時代はコミュ障で誰とも話しなかったのにこんなふうに変わった」という話をしてくれました。貴校は私たちの力を伸ばしてくれると共に、自らを変えるチャンスを与えてくれる学校だと感じたからです。」


「ハイ。就きたい仕事に直結する研究をしているからです。なぜなら、私は将来、途上国で砂漠化する地域を緑化する仕事に就きたいと考えているのですが、塩類集積しやすい半乾燥地にあって、貴校の○○研究室では適した農産物や土木技術を総合した緑化技術を学ぶことができるからです。」


 ここでは先ほどの「視野が広がる」が何を意味するのか、思い出してもらい、表現し直しました。

 だいぶよくなってきました。少し具体的になっていますが、おそらくほとんどの受験生はこのくらいのことを述べます。まだ平均点です。

 もう少し深入りします。次の問題をやってみましょう。あなたならどこを深め、拡げて表現することができるでしょうか。

スライド21どこがダメ②
 どこを深め、拡げることができるのでしょうか。最初の例でいえば、「今やらなくてはいけないことを一生懸命」の部分です。実際に何をしたのか、どんな苦労があり一生懸命といえるのか、そこを拡げます。
 二つ目の例でいえば、「将来の夢」の部分です。それがいったい何なのか、実現するために何を特に学ぼうとしてるのかを深め、拡げることができます。
 他人の解答の不十分さや誤りを指摘するのは楽なのに、自分のそれらを見出すのは難しいものです。具体的なエピソードとは、極端に言えば「いつ、どこで、誰と、何を、なぜ、どのように」という5W1Hくらいの勢いが必要です。実際の本番の面接ではそんなには要りませんが、どうしても受験生は、ボンヤリ、抽象的になりますから、5W1Hで一度構想、練習してみましょう。こんなふうになります。

「ハイ、文化祭の準備で、協力することの大切さを知ったことです。なぜなら文化祭の閉祭式で、リハーサルの時、紙吹雪がうまく降りない時があって、その時、仲間とぶつかり合いながら、装置の問題とタイミングの取り方の問題の二つの問題点があることがわかりました。その問題点に向き合って何度も話し合い、何度も練習して、本番ではうまくいったからです。」


「ハイ、デイサービスセンターで努力すればかなうことを知ったことです。なぜなら私は、自分を表現するのが苦手なので、お年寄りと歌う歌やゲームが心配で、休み時間に友人と練習したんです。何度も何度も練習するうちにこのメンバーと一緒だったら恥ずかしくないと思うようになりました。本番でもお年寄りが涙を流して喜んだ姿を見て、ああがんばってよかったと思いました。」


「ハイ、部活動で一つのことを続けることの大切さを知ったことです。なぜなら私達のバレー部は強くなかったのですが、先輩のようなフローターサーブが打ちたいと思い、毎朝の自主練で必ずそのサーブの練習を50本練習してきました。その結果、大会では勝つことはできませんでしたが、練習したサーブでエースが2本決まったからです。その後、部活動以外でも何事もコツコツ努力するようになりました」


 さあ、どうでしょうか。かなりよくなってきました。
 一方でこんな心配も出てきます。こんな私の具体例なんて、大学の先生たちは聞きたいんだろうか?という心配です。そんなふうに考える必要はありません。大学の先生たちは受験生の抽象的で上滑りした表現に飽き飽きしています。具体例やエピソードこそが実績、エビデンス。
 具体性をだすために、過去の履歴や面接を構想する初期は、
 「高校時代に最も印象に残っていることは何か」という質問で練習するよりも、それを分割して、

 ・「高校時代に最も嬉しかったことは何か」
 ・「最も悲しかったことは何か」
 ・「最も学んだことは何か」
 ・「印象に残る部活動での出来事は何か」
 ・「印象に残る生徒会活動での出来事は何か」

というような、自然に具体性のある答えが出てしまうような問いをつくってみてください。
 宿題です。紙と書くものを出してみましょう。上の5つの質問に対して何があったか思い出しながら、メモしていきます。抽象的な美しい言葉や使い古された決め文句は要りません。出来事やエピソードを書き出す、語る。
 君が自分について「協調性がある、協調性がある」と百回述べても、私は君を協調性があるとは思えません、たった1つの具体例、「文化祭でこんな工夫をしてみんなで紙吹雪を舞わした」エピソードがあれば納得することができます。答えはまずは5W1Hを意識して、練習します。繰り返しますが実際の本番ではそんなに要りません。だんだんと5W1Hの不要な部分がカットしていきます。
 帰国子女で英検1級で起業しているとか、インターハイや総文祭で有名になることができなかった多数派のあなたでも、嘘や悲劇を望まなくても、具体的なこれまでの軌跡があって、それで勝負できるのです。少し時間がかかるかもしれませんが、宿題、やってみてください。

 (3)答え方の型


 次は面接の答え方をみます。形から入ります。
 まずは形というか型をつくります。この型はマストとは言えませんが、シンプルで仕上がりやすいのでお勧めしています。

 その型は、

スライド25面接の型
という形式です。
 まず、ハイという返事をします。勢いもつくし、ハキハキしている印象を与えるからです。
 次に〇〇で結論を言います。そうしないと、これもありがちですが、こんなふうになってしまいます。

「ハイ、私はバレーボール部だったのですが、私たちは弱いチームだったのですが、練習かつらい時やうまくいかずに悩んでいる時、みんなで声をかけ合って助け合ってきました。私が好きなバレーボールを三年間続けられたのも、部のみんながいたからです。このようなことから助け合うことの大切さを知ることができました」


「ハイ、貴校のアドミッションポリシーである『新しい時代の人文人(ネオ・フマニスト)を育成します。』に共感し、またオープンキャンパスの時の模擬授業や案内して下さった学生さんの様子から自由で活気ある校風がわかりました。そのような校風から、こんな学校で学びたいと思いました」


 述べられていることは結論も含めて悪くはありませんが、まだ少し抽象的です。
 何よりもこれを本番で言うのは難しいのです。緊張もあって、答えているうちに、だんだん何を言いたいのか自分でもわからなくなってしまうミスに陥りがちです。
 「こういうことやああいうことがあったので、結論はこうです。」と結論を最後で述べるのは、大人であっても難しいものです。述べているうちに熱心に言おうとすればするほど、言いたかったこととズレていってしまいます。結論を最後に持ってこようとする難しさは、本番前の仕上げの段階の面接練習で痛感します。ですから最初に結論を言う。途中で詰まってしまっても、もう何が結論か伝えてあることが、面接官にとっても、自分にとってもわかりやすく、安心です。
 だから、まず〇〇で結論を言います。
 例えば「あなたが本学を志望する理由はなんですか?」と問われたら、どう答えますか。結論を言ってみてください。
 すると、結論が整理されていないことにも気付くかもしれません。これもありがちな初期の過ちは、1つの質問に対して結論が4つも5つも出てくることです。確かに理由は複合的かもしれませんが、ここでは限られた時間の面接です。結論を最初に持ってくる型は、あいまいなあなた答えの甘さも教えてくれます。
 次回、〇〇に入れる結論を考えていきます。

(2)過去・現在・未来のつながり


 面接対策に参考になるページがネット上にいくつかあります。次のものもその1つです。
 次の志望動機は、各人が初期に考えがちな誤りがあります。着色され番号が打たれているところに課題があります。どうしてよくないのでしょうか、指摘してみて下さい。

スライド14スタサプ問い

 現状であなたが表現しようとしている志望動機はこれに近いのではないかもしれません。
どうダメなのか、解説は次のように指摘しています。

スライド15スタサプ答え

 ここでも解説も前回指摘したように「過去・現在・未来の一貫性」や、具体例も求めています。このHPは面接や志願理由書のポイントがわかりやすく整理されています。大学側が知りたいのは、あなたの肩書きではなく、その経験を通じて学んだことです。ネタバレしてしまったら悪いのであまり多くは触れませんが、「よい例」も掲載されているので、参考にして下さい。

 次の例は、私が中学に勤めていた時の志願理由書や面接練習の例です。中学3年生が高校の前期選抜を目指して、志望動機を固めた時の表現です。一人一人と面接練習する時間が限られていたので『生活記録』に書いて練習していました。中学生が書いているので、幼い感じがするかもしれませんがちょっとつきあってください。


「ハイ、文章で表現をするような仕事に就きたいです。なぜなら、私は中学2年生までは小説家になりたかったのですが、職業調べをしていたら、小説家になれる確率は1%未満、才能がある人は中学や高校在学中から作品が入選していることを学びました。ですから正直言って私には才能がないものと、少し寂しい気持ちがしています。しかし中学で図書新聞を発行しても自分の言葉を人に伝える喜びはどうしても捨てることができません。高校でも国語表現を選択したり、一般常識を磨き、どんな職業があるかわかりませんが、文章を書く職業には何があるかを調べていきたいと思います。」


「ハイ、私は通訳になりたいと考えています。なぜなら、まず英語が得意ということがあり、実際に英検準二級を取得することができたこと、そして英語は国際的にコミュニケーションが取りやすい点もあげられます。私は文化祭でユニセフ支援の募金活動をしました。最初はあまり興味がなかったのですが、展示の準備をしながら世界の子ども達の現状を知れば知るほど、募金だけではなく、国際的な取り組みが必要だと考えるようになりました。ですから問題が解決するために語学だけでなく、どんな協力が必要なのか、大学で学びたいと考えています。ですから大学進学が盛んな御校で学びたいと考えました。」


「ハイ、私はカウンセリングにたずさわる仕事に就きたいと考えています。なぜなら、友人が人間関係で悩んでいる時、相談相手になりました。私だったらどうしようと考えましたが、うまくアドバイスすることができませんでした。でもしばらくたってその友人から、『あの時は聞いてくれてすごく助かった』と言われ、誰かの支えになることができる嬉しさを感じました。しかし、調べてみるとカウンセラーは実際になるのは難しいのを知りました。精神的に誰かの支えになる仕事には、保健室の先生や精神科医もあるかと思いますが、どのような仕事があり、どんな方面へ進む必要があるのか高校へ入学して選んでいきたいと思います。」


 練習していたのは、初めて長野県で前期選抜が行われた2004年なので、だいぶ前のことです。またところどころ回りくどいというか、もっと整理できる箇所もあります。しかし古くても変わらない大事なことを、中学3年生としてはよく考え、表現することができました。もちろん最初からこういう表現だったわけではなく、仕上げの段階ですがが、中学生でもこのくらいは表現できます。
 皆さんは大学へ進もうとしているので、もう少し細部を仕上げる必要があります。最初の例でいえば文章に携わる仕事をもう少し絞って候補を挙げたいです。二番目の例では「解決したい国際問題」に対する、解決のための入学後のプランを挙げたいところです。とりわけ英語が得意な生徒さんに多いのですが、「留学」と言いさえすれば合格すると思っている場合がよく見られます。最後の例では「どのような仕事があり、どんな方面へ進む必要があるのか高校へ入学して選んでいきたい」とは、もう言えません。保健室の先生なら教育学部か看護学部へ、精神科医なら医学部医学科へ進む必要がありますから。
 まとめます。先ほどの中学生の例は、全員が普通高校への進学を目指していたので「なぜその学部や学科なのか」「なぜその学校なのか」を十分には表現できていませんでした。それを差し引いた上で、方向というか「かつてこんなふうに考えてきたことを、もう少し具体的に練り込んでいけばいい」ということがわかります。
 中学生に負けるわけにはいきません。これから練り上げていきますが、自分を掘り下げることができさえすれば、中学生までのあなたを超えていくことができます。


(1)問われているのは3種類?

 面接で質問される内容はたくさんあるように見えます。出願しようとする大学の過去問を調べてもらえれば、さまざまなことが問われています。しかし、メインの質問は3種類しかありません。
 口頭試問は別です。3種類には含めません。口頭試問とは形の上では面接のように見えても、問われている中身は知識です。これも大学による受験生の口からでまかせ対策の一つで、面接対策ばかりしていて、普段の学習がおろそかになっていないか、知識の定着度を見ています。
 口頭試問対策はふだんの授業です。こんなことが問われています。
スライド1

 
 本題に戻ります。
 面接で問われる3つのメインの質問とは、次の3つです。

スライド18面接の基本

 「将来○○をしていきたいので、お宅の大学を選びました」と結びつくのであれば、BとCは同じことなので、2種類しかないことになります。資格や職業に直結する学科の志願者はこのパターンにしやすいでしょう。
 もっと極端にいえば、「将来○○をしていきたいので、これまでの高校生活でこんな努力をしてきました。その上で××という特徴を持つお宅の大学を選びました」であればA、B、Cは1つです。

 面接はいろんな問いがありそうだが、実は大きく3種類かその組み合わせであることを知っておきましょう。そしてその3種類に結びつけてさえいければ、準備する答えは多くないし、暗記できたかあわてることもありません。


 具体的にみます。「今まで最も力を入れてきたことは何ですか」という質問は、過去系です。
 「1分以内に自己PRしてください。用意、はじめ」はどうでしょうか。入学後の設計図や未来の夢をPRすることもできますが、基本はこれまでやってきたこと、過去系になります。
 ビックリするような質問であっても3種類に対する準備、過去系、志願理由系、未来系を準備しておけば、クリアできるのです。

 まずは受ける質問が、過去系なのか、志願理由系なのか、未来系なのか、見極めることからはじめましょう。では次の問いは、三種類のうちのどれにあたるでしょうか?解答はこのあと。

スライド19例題

 答えは、

(1)基本は未来系。

しかし繰り返しになるが、資格につながる学部・学科なら志願理由系とも結びつき、それに向けて今までやってきた実績があるなら過去系も結びつく。

(2)過去系。

大学入学後の研究や学びの予定、設計も加えるなら、志願理由系、未来系にも結びつく。

(3)過去系。大学入学後の研究や学びの予定、設計も加えるなら、志願理由系、未来系にも結びつく。

(4)志願理由系。

将来の仕事や資格とつながる未来系、実績があれば過去系にも結びつく。

(5)志願理由系。

将来の仕事や資格とつながる未来系、実績があれば過去系にも結びつく。「学びの設計書」の面接版。

(6)過去系。

そこで学んだことが将来の職業や学びたい学問に関係するなら、未来系、志願理由系にも結びつく。

(7)過去系。

得意教科と学びたい学科が関係するなら、未来系、志願理由系にも結びつく。


 こうしてみてくると、基本の3種類ですが、互いに結びつきが多いのにも気付きます。3つに分類しましたが結びついているという意味では、1つなのかもしれません。理由は、私たち一人一人が、過去の積み重ねの上にいま存在していて、将来の職業や大学生活という未来を想像しながら、いま大学への入学を希望、志望しながら生きているから、当然とも言えるのです。この結びつきを整理することができれば、あなたの面接対策の太い幹、アウトラインができあがります。

  3種類を少し詳しく見ます。
 過去系の問われ方のバリエーションを並べてみましょう。以下に13の問いを並べてみましたが、問われているのはすべて①の「高校時代に最も力を入れたことは何ですか」と同じ問いだと考えて下さい。
 就活の時にも聞かれ、就活生が苦しむと言われる問いが「学生時代に最も力を入れたことは何ですか」、通称ガクチカです。取り急ぎ過去に問われた13を並べてみましたが、それぞれ13の答えを準備する必要はないのです。極端に言えば一つ準備して、どんなふうに聞かれてもその準備した一つ、ガクチカへ結びつけて答えていけばいい。①~⑬まで、自分なりの答えを考えてみましょう。
スライド2

 ⑧のように探究活動、と限定される質問があるかもしれません。あなたのガクチカが探究活動ではなかった場合、探究は何となく消極的にやっていた場合でも、例えばこんなふうに結びつけていきましょう。

「ハイ、探究では音楽が人間に与える効果について探究しました。それは~という方法によって~という仮説を見出すことができました。ただ、そもそもなぜ私がそのテーマへ興味を持ったのかというとそれは部活動においてもそうでしたが、誰かにとって役に立ちたいと考えたからでした。部活動では~」

と自分が述べたいことに結びつけていけばいいのです。
 厳密には、どんなものでも準備した一つに結びつけていけばいいかというと、そうではないものも存在するでしょう。ただ無数に想定できるすべての問いに、別々の答えを準備する必要はなく、過去を生き、これからを生きようとするあなたという幹、軸に沿って答えを考えてけばいいのです。
 ちなみに、探究活動については問われる可能性が高いです。大人の話ですが、探究という授業を高校へ導入するために総合型選抜が大学へ課せられいる経緯があります。探究の授業で取り組んだテーマが自分の学部や学科の選択や志望動機と関係していれば理想的ですが、そうでない場合でも、先の例のように結びつけましょう。授業でやった探究のレポートは印刷して、内容を確認しておく必要があります。

 次は、2種類目の志願理由系です。下に12の例をあげましたが、先ほどとおなじように12コの解答を準備する必要はありません。あなたの志願理由に結びつけていけばいいのです。

スライド3
 ⑨以降は相手が変化球を投げてきましたが、受験生が何色を答えたか、何人と答えたかかで合否が決まるのではありません。詳しくは別のページで仕上げていきますが、大ざっぱにみます。例えば⑩なら、
 「ハイ、緑だと思います。なぜなら、私は将来途上国の農業生産に携わりたいと考えていますが、そのために御校で~」
 「ハイ、青だと思います。なぜなら、青にはさわやかなイメージがありますが、私は貴学で病気に悩む患者さんに青のように落ち着いて信頼できる医療技術を~」
というように結びつけていくのです。内容は志望理由です。
 ①④⑤は過去系の方が答えやすい場合はあります。それはあなたがアピールしたいポイントが過去や実績にある場合です。それなら過去系、ガクチカで答えていきましょう。

 最後は3種類目の未来系です。これも詳しくは別のページで仕上げていきますが、問われているのは将来へ向けての計画や設計。そしてその具体性です。
スライド4

 ⑥以降は、具体的に聞かれているが⑤と同じように、将来どんな○○になりたいのかが明確になっていれば、それに結びつけて答えていけばいいのです。憧れたり、なりたいと決意している将来の仕事、理想像が明確になっていないと答えに窮してしまいます。将来の仕事が決まっていない場合については、別のところでも考えていますが、今の時点で構いません、未来の自分の計画を示せれば優位になります。
 繰り返しになますが、基本3種類の問いは互いに結びついています。私たち一人一人は、過去の積み重ねの中で将来何かになりたいと思い、そのためにこんなふうに学びたい、大学生活を過ごしたいと志望していますから。世界でたった一人のあなた。自分の過去、現在、未来の結びつきを整理することができれば、太い幹、アウトラインはできあがっています。
 自分ならどう答えるかを考えながら、みてきました。ハンデを抱える人でも光が見えてきました。

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