(4)総合型選抜で受験するかの決断
多数派の受験生は、「ダメもとで」とか、「一般選抜重視だけど一応」とか、
とある程度、気軽な気持ちではないとしても、チャンスを増やすつもりで受験します。
ところが、練習すればするほど、例えば自分が研究したいことや、志望動機をよく考えているうちにその学校に対する熱意が強くなってきます。いつしか「落ちることができない」「絶対受かってみせる」という気持ちになっていきます。人は手間暇かけたことは愛おしくなるものです。手続きや対策で、一般選抜に向けての受験勉強の時間も削らなければならなりません。
よって、最初は「ダメもとで」とか「とりあえず」という動機だったとしても、不合格だったときには、ショックを受けます。このショックの大きさは人によって違い、3日で立ち直る生徒もいれば、3ヶ月以上引きづる場合もあります。長引くと、その後の共通テストや個別試験へも影響を与えていきます。
「どうしても別の表現をしておけばよかったと思い返してしまう」とか、
「あの大学の校門へ再び行くのが怖い」、
「あんなに時間をかけて、受験勉強の時間を削って対策したのに、意味がなかった」、
「初めて勉強でつまづいたので、すべての自信が無くなってしまった」、
など、本人が想定していた以上に後悔の時間が長くなり、引きづることがあります。よって、総合型選抜を受験するかどうかは覚悟が必要になってきます。
不合格だったとしても、当初、理性的に考えていた通りに次の目標へ向かう覚悟。
総合型選抜が行われた翌日から、一般選抜に向けて遅れを挽回する覚悟。
「受かったかも知れない」ではなく「落ちたと思って」受験翌日から次に向かう覚悟。
覚悟がないならはじめから一般受験に専念した方がいい。チャンスが増えるのではなく、受験したばっかりに実質的なチャンスを減らすことになりかねません。
思い浮かべてみてください。
もし不合格だったら、どうしようと考えているのか。
不合格通知を受け取った直後、何に取り組んでいるのか。
今、落ち着いて考えていることを、もし不合格だった場合に実行していきましょう。不合格が決まると多かれ少なかれ理性的でいられませんから。結果が出ていない今だから、落ち着いて考えることができます。
そもそもこの受験という試練、私立の指定校推薦で決まっている生徒が、決まっていない、受験でもがいている生徒に対して「がんばっているアイツら、ちょっと羨ましいなあ」とか、「合格していて嬉しいけど、自分は置いていかれているのではないか」と感じるある種の寂しさが示しているように、結果はともかく、受験を通じて大きくなることができます。
進学先で自分は何をし、そのために学校や学科をどう選ぶのか。自分が研究やつきとめたいことは何で、どこの大学ならそれをするのにいちばん適しているのか。過去の自分を振り返って、今まで一番感激したこと、一番嬉しかったこと、悲しかったこと、悔しかったこと、寂しかったことはどんな時だったのか。それを考えたり、振り返えることは、今まで「自分でも気づかなかった自分」を知ることでもあります。入試への対策を通して、自分を知り、創っていくことができるのです。それこそが長い目で見た時の「新しい入試」制度の価値であり、醍醐味なのです。
総合型選抜では、高校生でも就活並の自己分析が必要と言われます。いずれ就活を迎えた際にも必ず役に立ちます。就活生の面接よりも、こうやって対策してきた総合型選抜の面接の方がいい、と思うくらいです。あなたは、受験の結果はともかく、必ず大きくなります。