この単元は国際法を理解します。
 条約や議定書のような明文化されたものはもちろん、どこにも定められていない国際慣習法も国際法に含まれます。
 国内法であれば国民個人が同意しているかどうかにかかわらず拘束されますが、国際法は締結、批准した国しか拘束できません。国内法に違反すれば警察が取り締まったり、裁判所が刑罰を科したりしますが、国際法上の紛争を解決する裁判は主に国際司法裁判所(ICJ)で行われますが、この裁判は当事国の同意があって初めて始まり、同意がなければ開始されません。仮にICJで違法の判決が出た場合でも、その判決を強制するしくみはあるにはありますが、十分ではありません(国連安保理に一任されています。よって拒否権を持つ安保理の常任理事国への判決の強制は事実上不可能です)。国内法と国際法は比べてみると、大きく異なります。
 例えば常任理事国R国が隣国のU国に侵攻した場合、U国がICJに提訴してもR国は裁判の開始に同意しないでしょうし、仮に裁判が開始され国際法違反の判決が出ても、拒否権の発動でR国に対して何か制裁が行われるとは考えにくいのです。ICJを動かすのは難しいので、侵攻されたU国はR国の指導者個人Pを戦争犯罪者として裁くICC(国際刑事裁判所)の活用を考えていくでしょうが、ICCの主な規定にR国は未加盟で、また他の規定を使ってもPからの指揮命令を証明することが難しいと考えられています(より詳しく知りたい人はロシアの"戦争犯罪"を問えるのか~国際刑事裁判所の課題~ NHK解説委員室を参照)。
 こうして見てくると、国際法の不十分さに空しく感じるかもしれませんが、それだけ国家の「主権」が重んじられているとも言えるのです。

 ここでのポイントは、国家の三要素の一つ、「主権」の3つの意味が区別できるか、また、まずはICJとICC(などの国際的な司法機関)のしくみや違いを理解することです。

「国際刑事裁判所に関して、どのような事件を裁くために設置されたのかについて、国際司法裁判所と比較して説明せよ」(東京学芸大)

「国際法の限界を、国内法と比較した上で説明しなさい」

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