(4)結論は何を伝えるべきか

 結論をまず述べてしまう型を勧めてきました。
スライド25面接の型
 では結論、その〇〇はどんな内容だったらよいのでしょうか。
 出来事より、出来事から学んだことの方が適切です。つまり、

  「ハイ、文化祭の準備です。なぜなら‥」
  「ハイ、デイサービスセンターを訪れたことです。なぜなら‥」
  「ハイ、部活動です。なぜなら‥」

 それより、
  「ハイ、文化祭の準備で、協力することの大切さを知ったことです。なぜなら‥」
  「ハイ、デイサービスセンターで努力すればかなうことを知ったことです。なぜなら‥」
  「ハイ、部活動で一つのことを続けることの大切さを知ったことです。なぜなら‥」

 の方がいい。
 出来事を結論にするより、その出来事から「学んだこと」を結論にした方が、聞いている面接官からしても、表現しようとする受験生がそのあと続ける言葉の流れとしても、わかりやすくなります。またこの結論から表現する形式は、小論文にも応用できます。


 次に、「なぜなら」の後の✖✖です。
 次はとてもよく見られる例、失敗例です。なぜダメなのか指摘してみてください。
スライド20どこがダメ
 この例がダメなのは、抽象的だからです。
 ✖✖の部分には、具体的なエピソードを入れることを勧めています。
 高校生は、大人の入り口で抽象的な言葉を学んでいる最中だし、ましてや面接で優れた人物に見せたくて背伸びしようとするので、どうしても具体性が薄れてしまいます。
 さきほどの例はどこが抽象的で、どの部分でどう表現したらいいでしょうか。

 言いたいことは間違っていません。抽象的という言葉が難しければ、‘ボンヤリしている’と言いかえてもいいのですが、この文中にある、
 「充実した」、「沢山の」、「色んな」、「視野が広がる」、「将来」、「力」、などがボンヤリしていて、何を示しているのかわかりません。相手に切実感や本気度が伝わらず、アピールできていないのです。
 頭の中には「私は、なぜそう考えたのか」を示す具体例が、必ず隠れているはずです。それを表現しないのが残念というかもったいないというか、一番大事なところを落としているのです。繰り返しになりますが、過去系が問われている場合、面接官が知りたいのは、あなたが経験を通じて学んできたことです。
  「どんな出来事があって、‘充実した’と思えたのか、その出来事」、
  「どんなエピソード達があって、‘沢山’と言えたのか、そのエピソード達」、
  「例えばどういう人を想定して、‘色んな’人と思っているのか、その人々」、
  「どんな見方ができるようになることが、‘視野が広がる’と言えるのか、その見方」、
  「どんな職業や職種、未来への計画を、‘将来’と呼んでいるのか、その将来」、
     「何ができるようになることなのか、その‘力’」、

 私が感動した映画を「感動した、感動した」と百回述べても、あなたは感動することはできないでしょうし、私が自分について「協調性がある、協調性がある」と百回述べても、あなたは私を協調性があるとは思えないでしょう。「感動」「協調性」、最近よくある述語、「実感しました」と何度繰り返しても相手には伝わりません。
 ですから、そのボンヤリした抽象的な言葉が何を示しているのか、私はどんな具体例やエピソードがあって、その抽象が出てきたのかを、思い出してみましょう。

 アドバイスをもとに、こんなふうになりました。

「ハイ。他の学校にはない特徴があるからです。なぜなら、オープンキャンパスに訪れた際に案内して下さった学生さんがいたのですが、緊張する私たちを笑わせながら、的確に案内して下さいましたが、この大学の魅力について「先生方はあまり学生に干渉しないけど、研究したい分野は思いっきりできる設備や文献が整っている」と教えて下さいましたし、「私、高校時代はコミュ障で誰とも話しなかったのにこんなふうに変わった」という話をしてくれました。貴校は私たちの力を伸ばしてくれると共に、自らを変えるチャンスを与えてくれる学校だと感じたからです。」


「ハイ。就きたい仕事に直結する研究をしているからです。なぜなら、私は将来、途上国で砂漠化する地域を緑化する仕事に就きたいと考えているのですが、塩類集積しやすい半乾燥地にあって、貴校の○○研究室では適した農産物や土木技術を総合した緑化技術を学ぶことができるからです。」


 ここでは先ほどの「視野が広がる」が何を意味するのか、思い出してもらい、表現し直しました。

 だいぶよくなってきました。少し具体的になっていますが、おそらくほとんどの受験生はこのくらいのことを述べます。まだ平均点です。

 もう少し深入りします。次の問題をやってみましょう。あなたならどこを深め、拡げて表現することができるでしょうか。

スライド21どこがダメ②
 どこを深め、拡げることができるのでしょうか。最初の例でいえば、「今やらなくてはいけないことを一生懸命」の部分です。実際に何をしたのか、どんな苦労があり一生懸命といえるのか、そこを拡げます。
 二つ目の例でいえば、「将来の夢」の部分です。それがいったい何なのか、実現するために何を特に学ぼうとしてるのかを深め、拡げることができます。
 他人の解答の不十分さや誤りを指摘するのは楽なのに、自分のそれらを見出すのは難しいものです。具体的なエピソードとは、極端に言えば「いつ、どこで、誰と、何を、なぜ、どのように」という5W1Hくらいの勢いが必要です。実際の本番の面接ではそんなには要りませんが、どうしても受験生は、ボンヤリ、抽象的になりますから、5W1Hで一度構想、練習してみましょう。こんなふうになります。

「ハイ、文化祭の準備で、協力することの大切さを知ったことです。なぜなら文化祭の閉祭式で、リハーサルの時、紙吹雪がうまく降りない時があって、その時、仲間とぶつかり合いながら、装置の問題とタイミングの取り方の問題の二つの問題点があることがわかりました。その問題点に向き合って何度も話し合い、何度も練習して、本番ではうまくいったからです。」


「ハイ、デイサービスセンターで努力すればかなうことを知ったことです。なぜなら私は、自分を表現するのが苦手なので、お年寄りと歌う歌やゲームが心配で、休み時間に友人と練習したんです。何度も何度も練習するうちにこのメンバーと一緒だったら恥ずかしくないと思うようになりました。本番でもお年寄りが涙を流して喜んだ姿を見て、ああがんばってよかったと思いました。」


「ハイ、部活動で一つのことを続けることの大切さを知ったことです。なぜなら私達のバレー部は強くなかったのですが、先輩のようなフローターサーブが打ちたいと思い、毎朝の自主練で必ずそのサーブの練習を50本練習してきました。その結果、大会では勝つことはできませんでしたが、練習したサーブでエースが2本決まったからです。その後、部活動以外でも何事もコツコツ努力するようになりました」


 さあ、どうでしょうか。かなりよくなってきました。
 一方でこんな心配も出てきます。こんな私の具体例なんて、大学の先生たちは聞きたいんだろうか?という心配です。そんなふうに考える必要はありません。大学の先生たちは受験生の抽象的で上滑りした表現に飽き飽きしています。具体例やエピソードこそが実績、エビデンス。
 具体性をだすために、過去の履歴や面接を構想する初期は、
 「高校時代に最も印象に残っていることは何か」という質問で練習するよりも、それを分割して、

 ・「高校時代に最も嬉しかったことは何か」
 ・「最も悲しかったことは何か」
 ・「最も学んだことは何か」
 ・「印象に残る部活動での出来事は何か」
 ・「印象に残る生徒会活動での出来事は何か」

というような、自然に具体性のある答えが出てしまうような問いをつくってみてください。
 宿題です。紙と書くものを出してみましょう。上の5つの質問に対して何があったか思い出しながら、メモしていきます。抽象的な美しい言葉や使い古された決め文句は要りません。出来事やエピソードを書き出す、語る。
 君が自分について「協調性がある、協調性がある」と百回述べても、私は君を協調性があるとは思えません、たった1つの具体例、「文化祭でこんな工夫をしてみんなで紙吹雪を舞わした」エピソードがあれば納得することができます。答えはまずは5W1Hを意識して、練習します。繰り返しますが実際の本番ではそんなに要りません。だんだんと5W1Hの不要な部分がカットしていきます。
 帰国子女で英検1級で起業しているとか、インターハイや総文祭で有名になることができなかった多数派のあなたでも、嘘や悲劇を望まなくても、具体的なこれまでの軌跡があって、それで勝負できるのです。少し時間がかかるかもしれませんが、宿題、やってみてください。