高校 政経・倫政の補習講座

大学入試に向けた知識、学んだことと生活を結びつける知恵を提供します。

タグ:知徳合一

 今回はソクラテスを見ます。
 「ただ生きるのではなく、よく生きること」を現代の私たちも求めています。「ソクラテスにとって『よく生きること』とはどう生きることだったのか」を視点として持って理解しようとすると、自分の生き方にもいかせますし、ネットやTVで溢れる言葉のいくつかがソフィスト的だと見えてきます。
 ソフィストのプロタゴラスは「人間は万物の尺度である」と、同じものでも見る人によって見え方は異なっていて、普遍的な真理などない、と考えましたがソクラテスは違います。本当の勇気とは、本当の正義とは、を当時のその道の評価が高い(と言われる)人たちと対話しながら、見つけようとしました。人文や社会分野のアルケーを求めようとした、とも言えます。対話によって「本当のこと」、真理を求め知ることは、人間の徳であり、魂をよいものにすることであり、さらにそれは実践や幸福に結びつくと考えます。知徳一致、知行合一、福徳一致、つまり知=徳=幸福なのです。
 ちなみに現代もソフィスト的な、幸福や正義、真理は「人それぞれ」「人によって違う」「議論しても平行線」と考えられることが多いでしょうし、仮に真理があったとしても、行動にうつすことができなかったり、幸福に結びつくことはさらに稀です。実際にソクラテスは “民衆の裁判によって” 当時としても通常ならあり得ない、また処世術だけを考えれば避けることができた、死刑判決を受けました。当時も現代もソクラテスは社会を照らす鏡とも言えます。
 ソクラテスの言っていることは難しくありませんが、プラトンやアリストテレスなど後継者たちが、精緻に仕上げようとするので難しくなります。
 これはイエスに対するアウグスティヌスやトマス・アクィナス、仏陀に対する竜樹、無着や世親、孔子に対する孟子や朱子、王陽明も同じです。後継者の方が難かしい、そう覚悟しておいて下さい。
 
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倫CS02裏



 今回の単元は、ソクラテスとプラトンです。
 プラトンがソクラテスについて記述した著書、『パイドン』や『クリトン』、『ソクラテスの弁明』などを読むと、ソクラテスと問答した人は、彼が納得いくまで質問してくるので、さぞ疲れただろうし、人によっては腹を立てただろうと思います。その恨みはソクラテスへの死刑につながっていきますし、ソクラテスにとってはそれほど「本当のこと」の方が大切だったのです。

 ソクラテスの言っていることは難しくはありません。むしろポイントはプラトンのイデア、そして魂の三部説(四元徳)とそれを国家に応用した理想国家です。
 これらは現代の私たちの考え方と違うので、最初は取っつきにくいかもしれませんが、後にキリスト教がこれらの考え方を参考にしていきますし、私たちも「施政者たる者は、模範や頭脳であってほしい」とか「それぞれが役割を果たすことが組織として優れている」と考えたりすることがあるので、全く無縁とはいえません。
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