今回はアリストテレスです。
 彼は徳、友愛、正義、事物の本質(形相と質料)などを分類した人です。『ニコマコス倫理学』や『政治学』が主著ですが、『動物学』では500以上の生物を観察し「生物学の祖」とも言われるほどです。それほど分類好きです。
 それもあって、ここでのポイントは、アリストテレスが分類した徳や正義の種類を区別することです。しっかり区別してから問題を解こう、と考えてもはかどらないかもしれないので、問題を解いて区別を復習する方法をオススメします。

 蛇足ですが、M・サンデルは『ハーバード白熱教室』や『これからの「正義」の話をしよう』でアリストテレスをよく引用します。ずっと後の単元で出てきますが、サンデルは「人間はポリス的(共同体的)動物である」とアリストレテスが言ったように、人間というのはその人が属する共同体と無縁ではいられない、自由や結果よりも、共同体の善を求める点で、共通する考え方をするからです。
 アリストテレスが分類した配分的正義や調整的正義の考え方は、例えば「マイケルジョーダンの報酬は適切か」、「歴史的に不利な境遇におかれた黒人を、大学入試で有利にあつかうアファーマティブアクションは適切か」など、現代の諸課題を考えるのにも役立ちます。
 同じように「人間はポリス的動物である」という考え方は、例えば「過去に自国が起こした過ちを、過ちが起きた時点では生まれていなかった者に責任はあるか」をアリストテレスなら「ある」と言うでしょう。

 考えはじめると結構楽しいです。たぶんそうやって考えていることが哲学なのです。
 ただ、深入りしすぎると受験勉強がはかどりませんので、ほどほどに。

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