今回はベルクソンやガンディー、シュヴァイツァーらを見ます。
 この単元は生命を考える時のヒントを与えてくれます。現代社会は出生前診断や尊厳死、男女産み分けのようにQOL(生命の質)を重視する技術が広がりつつあります。確かにただ寿命だけが延びてもいきいきとした生が実現できなければ意味がない、生命の質(QOL)が大事だという主張はわかりやく、保健体育や家庭科の教科書でもQOLは重視されているでしょう。が、高い質を求めるということは低い質を想定していて、低い質の方は低く扱われて構わないという考え方とつながりがちです。今回の単元は、生命倫理を考える時に、「そもそも生命とはどのようなものなのか」を問い直すヒントになるのです。
 シュヴァイツァーの生命の畏敬、ガンディーのアヒンサー(不殺生)はある角度からQOLの考え方に疑問を投げかけます。ベルクソンも生命の計り知れなさを提起します。
 ベルクソンが難しいかもしれません。「生命の跳動(飛躍・エランヴィタール)」、「創造的進化」などをキーワードにしていますが、彼は生命の進化とは機械論や目的論ではとらえられず、予測不可能な爆発で、その爆発が可能なのは開かれた社会だと考えます。確かに魅力的です。
 ベルクソンの考え方は、日本へも急激な文明開化、欧化政策、近代化批判で大正生命主義(北村透谷や田山花袋、梶井基次郎ら)という潮流を生んでいきます。
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