高校 政経・倫政の補習講座

大学入試に向けた知識、学んだことと生活を結びつける知恵を提供します。

タグ:マネーストック

 インフレやデフレは貨幣価値の上下でしたので、国民生活を左右します。よって中央銀行である日銀は対策をとります。対策の取り方は世の中に出回る通貨量、これをマネーストックといいますが、マネーストックを調整することでインフレやデフレをやわらげたり、解消しようとします。
 この調整を金融政策といい、今回の単元のポイントは、金融政策の種類と内容を理解すること。それと信用創造の計算問題を解けるようになることです。
 日銀による金融政策の大ざっぱな原理は、
  ・インフレが進んでいて是正しようとする時は、マネーストックを減らす。
  ・デフレが進んでいて是正しようとする時は、マネーストックを増やす。
 田んぼに水が多いときは水を減らそう、水が少なければ増やそうと、蛇口を閉めたり緩めたりすると考えればいいでしょう。
 日銀は「銀行の銀行」として民間の銀行(金融機関)に対して、これらの操作を通じて、マネーストックを調整します。不況の時、世の中に出回る通貨量を増やしたければ、企業や個人が資金を借りやすいように、民間の銀行の金利が下がるようにする。
 金利はまだ皆さんは身近ではないでしょうが、進学して初年度納入金をのためとか住宅ローンのため、開業するためとか工場の設備を増やすために資金を例えば100万円借りるというような時、金利が年5%なら105万円返済することになりますが、1%の金利なら101万円の返済ですみます。金利を下げれば経済活動は活発になるのです。
 逆に好況で景気はいいけれどもインフレが進みすぎていると日銀が判断すれば、資金を借りにくいように金利が上がるようにします。
 金融政策の3本柱は、
  ①公開市場操作、
  ②公定歩合操作、
  ③支払準備率操作、
 です。
 ただし、この3本柱の2つ、公定歩合や支払準備率(預金準備率)は金融ビッグバンで民間の金融機関が金利を自由に設定するようになったので、現在は使われていません。使われてはいませんが、金融政策の原理というか「日銀から市中銀行への貸し出しの金利が下がれば、市中銀行が一般の人に貸し出す時の金利も下げる」という基礎を理解するのに便利ですので、ここから理解し始めましょう。

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 今回の単元はインフレとデフレを理解します。
 インフレとは貨幣価値が下がること、デフレとは貨幣価値が上がることです。
 貨幣価値という言葉も堅苦しいですが、例えば100円でコンビニのコーヒーが買える時と、120円でないとコーヒーが買えない時では、100円玉の貨幣価値が高いのは、100円でコーヒーが買える時です。
 というと貨幣価値が上がるデフレの方がいい気がしますが、デフレは一般に不況の時に起こります。景気がよい好況の時は経済活動が活発になり、どんどん商品が売れて、つくれて、買えるので、貨幣価値が下がります。家計でも好況の時は、プチ贅沢というか少し価格が高くても、所得が上がっているので、我慢せずに買い物をします。こうしてインフレ、貨幣価値は下がっていくのです。経済活動が活発と考えれば、インフレが悪いとは必ずしも言えません。一般に好況の時にはインフレが起こり、不況の時にはデフレになります(例外が不況下の物価高、スタグフレーションです。最悪の組み合わせですね)。
 受験のポイントは、「なぜインフレになるのか」、「インフレなるとどのような影響があるのか」という原因と影響を、混ぜずに分けて考えることです。

 「なぜインフレになるのか」原因は大きく2つに分類できます。
  (1)ディマンド・プル・インフレという需要が引き起こすインフレ
     (2)コスト・プッシュインフレという供給が引き起こすインフレ
 需要が引き起こすインフレは、家計の消費活動が活発で総需要が総供給を上回った場合に起こります。高度成長期がそうでした。一方、供給が起こすインフレは、原材料費や賃金が上昇したことで起こるインフレです。1973年の第1次石油危機や2022年のロシアによるウクライナ侵攻で発生していて、こちらのコスト・プッシュインフレの方は一般に「悪いインフレ」と言われます。

 「インフレになるとどのような影響があるのか」は、実質賃金や借金の負担、年金など立場によって、いい影響も悪い影響もあります。それらを区別します。繰り返しますが、インフレの原因と影響は区別しましょう。

「仮に金融市場と財市場があり、外国との取り引きがなく、商品は1種類だけが貨幣を使って取り引きされると考えよう。このとき、何がデフレの原因となっているのか、またデフレはどのような弊害をもたらすのであろうか。100字以内で記せ」(早稲田大学)

 また、原因と影響が理解できると、借金をするのはインフレ時が有利か、デフレ時が有利かとか、今は預金した方がいいかな、それとも消費する方がいいかなとか家計にも役立つはずです。

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